平成26年03月13日 文教科学委員会

○橋本聖子君 おはようございます。自由民主党の橋本聖子でございます。
 本日はこの質問の機会をいただきありがとうございます。
 先般行われました第二十二回冬季とオリンピック・ソチ大会の団長を務めさせていただきました。委員長始め委員の皆様方には、長期にわたりましてこの団長としての派遣をお許しをいただいたことに改めて感謝を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。
 また、下村大臣には、お忙しい中ソチまでお越しいただいて、そして選手の激励をし、また昨年決定しました東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて大変な御尽力をいただいたIOCのバッハ会長始め皆さんにお礼の御挨拶回りをしていただいたということ、本当に感謝を申し上げたいと思います。
 また、現在行われておりますパラリンピックの開会式には、櫻田副大臣が、選手を激励のために現地に訪問をしていただいたことにも改めて感謝を申し上げたいと思います。ソチのオリンピックの後のパラリンピック大会というのは、ウクライナ情勢のあの緊迫した状況の中で、厳しい開催の面が伝えられておりましたけれども、副大臣にお越しをいただいたということで選手たちが大変勇気付けられたという報告も現地からいただいておりますので、本当にありがとうございました。
 オリンピックは終わりましたが、パラリンピックが終わらなければこのソチ大会終了ということにはなりませんので、パラリンピックの選手団が帰国をいたしましてから、オリンピックとパラリンピックの選手団が同時に帰国報告をしたいと考えております。のオリンピックは夏季の二〇一六年リオデジャネイロ大会、そして冬季のオリンピックというのは二〇一八年平昌大会、そして二〇二〇年東京、その後のオリンピックはどこになるか分かりませんけれども、二〇二〇年に向けて、こういった四年、八年計画の中で新しい強化体制を整えていくための提言と要望をこれから四月以降に出させていただきますので、そのときにはまた詳しく現状報告と今後の取組についての要望をさせていただきたいと思います。
 今日はこの機会をいただきまして、現状報告と、そして基本的なスポーツへの認識というものをお聞かせいただければと思っております。
 ソチ大会、二月の七日に開幕し、二十三日に閉幕をいたしましたけれども、今回、冬季大会では初めて女子の選手が男子の選手を上回りました。特に、アイスホッケー、カーリングが、女子しか今回出場を果たすことができなかったということもありまして女子の数が上回ったことは当然なわけでありますけれども、その中で、金が一つ、銀が四、銅が三、合計八つのメダル、そして入賞が二十八ということで、長野での自国開催を除きますと、海外でのオリンピックでは史上最高のメダル数と入賞数を誇ることができたということで、非常にうれしく思っております。
 長野の十個を目指してはいましたけれども、そこに到達することはできませんでしたが、十五歳のメダリストから四十一歳のメダリストまでということで、また非常に歴史の浅いスノーボードや、新しく種目になったスキー・スノーボードの回転でメダルを獲得することができたということは、非常にこれからのオリンピック冬季の可能性が秘められたものではなかったかなと思っております。
 それと同時に、平野選手や平岡君のスノーボードの活躍によりまして、オリンピック後、今もスキー場ですとかスノーボード競技場がにぎわって、大変な経済効果を生んでいるということで、ジュニアの育成もこの機会にしっかりとやっていこうという状況で、スキー連盟としても、非常にそういうスポーツの活躍の効果がいろいろな部分で波及されているということで、これを機会にもっとスポーツの理解や底辺の拡大というものに一気に進んでいかなければならないと考えます。どちらかというと日本は熱しやすく冷めやすい状況にスポーツ界は置かれておりますので、四年に一度注目されるのではなくて、このことの活躍が更に毎年恒久的にしっかりとスポーツの振興につながっていくような、そういう施策も、私たちスポーツ界の方から新たな改革案を打ち出していかなければいけない機会ではないかなと感じております。
 特に葛西選手、四十一歳でメダルを獲得したわけですけど、七回目のオリンピックで初の個人種目メダリストということで、レジェンド葛西と言われましたけれども、そこに至るまで、彼の競技人生といいますか、あらゆるメッセージ力があったのではないかなと思います。
 ただ単に言葉で表すというメッセージ力ではなくて、彼が十九歳から四十一歳までの出場したオリンピックの過程には大変な挫折もありました。そういう中で、続けていくことの意味と、そして続けてきた者にしかチャンスはないんだということも見せてくれた技ではないかなと思いますし、また、彼の頑張っている姿を見る十代、二十代、三十代、四十代と、それぞれの年代において、彼の生き方、そして競技に向かう姿勢、そしてその後の振る舞い、そういったものが全ての方たちに、取る側の人にとって様々なメッセージ力を発することができるというのは、これはまさにスポーツ力ではないかなと思います。
 そういったスポーツ力を、これからは私たちは国の文化力に変えていく必要があるんではないかなと考えます。特に、青少年の育成というものはもちろんですけれども、スポーツが中心となって、教育や福祉や医療や、あるいは環境や観光、そういったものにどれだけの力を発揮することができるかということを、これを国と連携を取りながら、オリンピック委員会としても、あるいはスポーツ界としても、二〇二〇年というものを、一つの大きな通過点という目標をいただきましたので、六年間掛けて大改革に取り組んでいきたいと思っております。
 また、質問の前に話が長くなりますけれども、今回、女子の選手が非常に活躍をしてくれまして、そこには、マルチサポートですとかJISSで女性アスリート支援をしていただいているのも一つの大きな力になりました。
 旗手を務めていただいたカーリングの小笠原選手やチームメートの船山選手、こういった二人の選手は、子供を育てながらの競技の復帰でオリンピックを勝ち取ったということであります。二人とも四歳の子供を育てながらの競技生活でありますけれども、そういった女性アスリートが抱える女性ならではの問題点をしっかりとサポートすることもこれから重要なんですけれども、特にこれからは、そういう女性特有の問題ですとか、女性特有の直面する課題というのがたくさんあるものですから、アスリートの支援と同時に、これからは女性コーチの支援、これをしっかりとやっていく必要があるのだろうと思います。
 それによって、また女性のスポーツの活躍と同時に、医療というものの観点からスポーツが抱える問題もありますので、一般のこれから出産を経験していく方たちにとっての、また大きな一つのメッセージも発出することができるんだと思いますので、世界最先端のスポーツ医療ですとか、そういったものを施しているスポーツ先進国に比べますと日本は選手の支援にだけ今とどまっておりますので、これからもっとそういったものを拡充していくことに踏み切っていかなければ、どんどんどんどん世界との差が付けられてしまうというようなことであります。
 そういう意味では、ロンドンのオリンピックで初めてマルチサポートをしていただきました。そして、今回も、冬では初めてなわけですけれども、氷の方と雪の方の選手村が分かれますので、夏とは違いまして、今回、マルチサポートハウスを二か所に設置をしていただいたということは非常にプラスになりました。
 特に食のサポートが大変大切で、お米を八百キロ日本から持ち込んでいただいて、常にコンディショニングのために日本食で選手たちがしっかりとコンディショニングができるような体制も整えていただきました。特にジャンプの競技のような選手は体脂肪率をもう八%、七%にずっと保っていかなければいけないという極限の状況の中で体調管理をしていますので、マルチサポートの役割というのは非常に大きなものでした。
 医療のサポートあるいはメンタルサポート、そして交代浴ですとかいろいろな水を使った治療法ですとか、そういうようなものを全て施していただきました。また、インフルエンザの問題もありました。即座に対応するためには選手村からそういった選手を外に出さなければいけない、そういうような対応も全てマルチサポートでしっかりと管理していただきました。
 雪の競技に特化しますと、今回はストラクチャーマシンを入れていただきました。これは、予算前倒しで本当に大臣の決断によって導入していただきました。これは、今、スキーはワックスの世界を超えましてスキーの板の裏の模様で勝負をするというような、そんな時代になって、選手の競技力を支えるのは、科学技術的な観点から道具の開発まで力を付けていかなければ最先端で選手を育成することができないというような、非常に高密化、高度化されてきております。そのことも含めて、これからマルチサポートというものがもっと選手のためになるような、あるいはアスリートファーストと言われるように、選手が要望したときに食事がしっかり取れるようなシステムですとか、もっとより選手村に近いところの場所を確保するための事前の準備や予算ですとか、そういうものを挙げると切りがないわけですけれどもそういったサポートが必要とされております。
 ただ、どんなにいいオリンピックのこういう舞台が整ったとしても、最終的にそこの舞台に上がる商品といいますか品質が良くなければオリンピックが成功したとは言えないと思います。そういう意味では、これから二〇二〇年に向けまして日本は最大の、過去最高のオリンピックの舞台を整える力が私は日本にはあると思いますし、期待ももちろんしております。最終的にオリンピックが成功したんだと日本の皆さんが実感をしていただくことの最大のものは何かというと、やはり選手の活躍ではないかなと思いますので、オリンピック委員会としては、そういう日本の皆さんに最高の舞台で夢と希望と感動、そういうものをしっかりとお届けできるような人間力あふれる、競技力向上を目指すことのできる選手たちをしっかりとまた育てていきたいと考えますので、また是非よろしくお願いをしたいと思います。
 これから強化の方のお話をさせていただくんですが、私はオリンピック委員会の強化本部長という立場で、今強化の責任者ということになっているわけなのですけれども、二〇二〇年、これ、冬も夏も同じことなんですけれども、特に二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会に向けて目標としているものは、もちろん文科と一緒になってこの計画を立てておりますので御存じの部分だと思いますけれども、金メダルの取得数を三位以内にと目標を立てさせていただきました。これは、二十から三十三種目のメダルを獲得することがなければいけないということで、非常に厳しい状況でありますけれども、ただ、やり方によっては非常に可能性があるんだと思います。また、夏は全部で二十八競技ありますので、この二十八競技における全ての種目への入賞というものを目指していく。これ、入賞する数が少ないと当然上に上がれる選手の割合が少なくなりますので、そういったこともしっかりとやっていかなければいけないんだと思っています。
 この目標を達成するために必要なのは、ジュニアアスリートの発掘と育成と強化、これは当然なのですけれども、国内外の合宿ですとか、そういう大会の派遣の充実、医科学サポート、あるいは四十七都道府県にオリンピックのメダリストがおりますから、そういうような選手たちを更に育成をし雇用をして、メダリストの発掘作業を同時にやっていかなければいけないのと、各県にNF独自のエリートアカデミーというものを実施していく必要も同時にあるのだと思います。
 また、海外でしか競技ができない、あるいは合宿ができないというような種目もありますので、そういったことに関しての長期海外派遣などが挙げられますし、チーム競技は当然海外で転戦をさせなければいけないものですから、トップレベルとの競い合いの中で海外のクラブに選手を送り込んでいくという、そういうルートの開発、そんなこともしていかなければいけませんし、また強化費の財源の確保、これは一番の問題でありますけれども、NFの事務局の同時に基盤整備というもの、体制、組織の強化、こういったものもしていかなければいけないと思っております。
 ここで、やっと質問になるんですけれども、二〇二〇年の東京大会に向けて、やはり何としてもトレーニングセンターの拡充というものを更に目指していただきたいなというふうに思っております。
 都立産業技術研究センターの跡地、これは今のトレーニングセンターの横にあるわけなのですけれども、ここが土壌汚染の問題もあるようで、こういったものを早急に解明して東京大会までに使用できるようにしたいというお考えだとお聞きしております。これは大変スポーツ界にとっては有り難いことですが、できるだけ早くの整備をしていただいて、選手を育成するにはどうしても時間が掛かりますので、早い段階で、リオに間に合うぐらいのスピードで、そういった拡充強化に入っていただきたいと思います。
 それと同時に、海外では、ナショナルトレーニングセンターを使用するときには、使用料ですとか食事代ですとか宿泊費、これは当然負担がありません。でも、日本はまだ自己負担が多少ありますね。韓国の方へ行きますと、ナショナルトレーニングセンターを使用して合宿をする場合は逆に日当まで出るという国もあります。日本は、そういう意味ではまだ自己負担があり、まだナショナルトレーニングセンターを使用するのに使用料が掛かるというのは、ちょっと強化体制としては非常に遅れていくような状況になります。その点についてこれから大臣がどのようにお考えなのかということをまずお聞きしたいと思います。
 
 
○国務大臣(下村博文君) まず冒頭、橋本委員にはソチ・オリンピックの団長として大変御尽力をいただいたことに感謝申し上げたいと思います。
 お話ありましたが、国外では過去最高の八個のメダルを獲得されたということ、それから、残念ながらメダル獲得できなかった選手も、例えば高梨選手や浅田真央選手も本当に国民から勇気と感動を与えたくれたという所思、振る舞い含めて、それぞれのオリンピック選手がそれぞれのドラマをつくって、そして自分の限界に挑戦をされたというその姿は、本当に、連日日本でも中継等を含めてメディアでも報道されておりましたが、大変な勇気と感動、そして自分も頑張ろうと、こういうことを与えてくれたのではないかというふうに思います。
 特に橋本団長はマインド的な部分で選手団の取りまとめをされておられたということを、私は、実際はゼロ泊三日でソチに行ったんですが、ソチにいる滞在時間は十時間ぐらいだったんですが、選手村に行きまして、そのとき日本選手が宿泊している棟に行きましたら、もう橋本団長の選手に対する檄文というかメッセージがいろんなところに貼ってありまして、本当に心身共に先頭に立って選手を引っ張っているんだなということを目の当たりにしました。選手も橋本団長の下に、これはコーチ、監督含めて、まさに日本選手団が一体となって取り組んでいるということは、これは橋本団長の力だと、リーダーシップだというふうに思いますし、マスコミがどこもそれは入っていませんから書いておりませんけれども、代わりに私の方からほかの委員の方々にも報告をさせていただきたいと思います。
 また、マルチサポート拠点も、これはスケートの方ですが、視察に行かせていただきましたが、冬季では初めてソチに設置をしたということですが、本当に選手の皆さんが喜んでおりました。ありとあらゆる部分でやっぱりサポートがあると。そのことによって、競技については今までの練習の成果をあらゆる意味でベストの状況で発揮できると。そのためのマルチサポート拠点があるということは本当に選手にとっても励みになるということでの感謝というのは私も随分聞かされましたし、そういうことで貢献できるということはすばらしいことだなというふうに思います。
 これから二〇二〇年に向けて、日本は、トップアスリートだけではなくスポーツ全般についてもそうですが、国の施策が非常に遅れている部分がやっぱりあると思いますので、是非二〇二〇年、オリンピアン、そして今パラリンピアンも活躍している最中でありますが、それぞれベストの状況でこれから二〇二〇年を迎えるような、そういう環境づくりをしていくことによって、これは選手のためだけでなく、国民全体がそのことによって内心面における活力を提供してもらうという意味で、オリンピック・パラリンピックの位置付けは大変重要だというふうに思います。
 そのために、今御指摘がありましたが、ナショナルトレーニングセンターでありますけれども、このナショナルトレーニングセンターも冬季の選手が活用できているという部分があって、それもロンドン・オリンピックと同じように、今回ソチにおいてもナショナルトレセンも一定の貢献をした結果がメダルにも表れているのではないかと思いますが、今のナショナルトレーニングセンターは競技種目対象が限られているということで、御指摘のように第二ナショナルトレーニングセンターの整備について、これはJOCからも要望されていることでありますし、また、二〇二〇年東京大会の成功のためにも日本チームの格段の競技力向上を図る必要があることから、競技団体の強化計画などを踏まえながら、東京都を始め関係者の意見を十分伺いつつ検討するよう事務方に指示しているところでありますし、私の方からも直接、この都立産業技術研究センターは東京都の土地でありますので、是非協力をしていただきたいということを昨年から申入れをしているところでございます。
 また、既設のナショナルトレーニングセンターは最先端のトレーニング施設設備を有しておりますが、競技団体の負担軽減等の観点から、その利用料金は同規模の公共スポーツ施設の利用料金と同程度の設定としているところでございます。このNTCの利用料、それから宿泊料、食事代等の無料化についてのことでありますが、これは独立行政法人が運営する施設の在り方や、NTC以外の施設で強化活動を行っている競技団体とのバランスなど、考慮すべき課題もございます。他方、NTC利用料金等の競技団体負担については、強化費の競技団体負担分である三分の一を負担し切れない競技団体もあり、選手本人が負担せざるを得ないということも聞いておりまして、これも同様の課題であるため、御指摘の趣旨は十分理解できるところでもございます。
 今後、二〇二〇年東京大会の成功に向け、競技力向上の観点からどのような方策での対応が可能か、JOCや関係団体と緊密に連携し、検討してまいりたいと思います。
 
 
○橋本聖子君 ありがとうございます。是非、今大臣おっしゃっていただいた内容を早急に進めていただきたいというふうに思います。
 先ほど高梨沙羅選手あるいは浅田真央選手のお話がありました。先ほどのマルチサポートといいますか、サポート体制の一環として強化をしなければいけない話にちょっと戻るのですけれども、金メダルを取れる選手、取れなかった選手、いろいろあります。今まで私が数多くの選手たちを見たり、あるいは競技を通じて情報を得たり、そういう長い間の中で、どういうメダルの取り方が一番難しいのかということによく話になります。一番難しいメダルの取り方は、世界ランキング一位の選手が金メダルを取ることです。二番、三番が金メダルを取ることは非常に多いですね。四番、五番手のランキングの選手がメダルに手が届くということが多い。それだけオリンピックというのは非常に難しい勝負どころなんだということを表しているんだと思います。
 そういう意味においては、今回メダルを確実に取れる選手が取ることができなかったということの敗因、これはマスコミ対策ですとか含めまして、周りのサポートする体制強化、こういったものも全て考えて強化対策を日頃からしていかなければ、メダルを取りにいくのではなく、力をどう発揮させるかという観点に変わっていかないと、オリンピックが今まで以上に特別なものという扱いの中で緊張して、そして競技力が落ちてしまうという傾向が今まで見えております。そういったことも全てがマルチサポートなのだということ、これも私たちの一つの大きな課題だなと今回思いました。
 そして、特に世界最高の選手を育てるのには何が必要か。これは実は世界最高のコーチが必要です。世界最高のコーチでなければいい選手を育てられないんだと私は常々思っております。
 その中で、今、日本の限界は、実はアマチュアスポーツはボランティアでコーチしているような状況です。これではいつまでたっても世界に通用する選手を育てることはできないんだと考えているんですが、それをにらみながら、今JOCとしてはナショナルコーチアカデミーというものを実施しておりまして、共通のトップコーチに必要なカリキュラムというものを、合同で、トレーニングやあるいは講義ですとかあらゆるものを実習させまして、一週間に三、四泊しながらこれを十週間、あらゆる分野について修了した者が初めてそのカリキュラムを修了したという修了証をもらって、そしてやっとしっかりとしたナショナルコーチに任命されるということなのです。
 しかし、そこの部分だけに終わるのではなくて、これからしっかりとこの修了というものを義務付けていく中で、将来的には一つの国家資格のようなものがあって、安定した状況の中で選手たちをしっかりと専門分野としてプロフェッショナルの意識の中で育てていくというようなコーチや監督の育成が今急務なわけです。その点について、大臣、どのようなお考えを持っていますでしょうか。
 
 
○国務大臣(下村博文君) 確かに、羽生選手は世界トップのコーチを求めてカナダに行ったわけですし、竹内選手もスイスで長くコーチの下で訓練をした。その結果がメダル獲得につながっているわけですし、それが海外ではなくて、国内で日本選手にとってもすばらしい監督、コーチがいる環境であれば、なかなか経済的な理由でチャレンジしようと思ってもできない選手も本当にたくさんいるというふうに思いますし、また、行った選手たちも経済的にはもう大変だったんではないかと思いますし、トータル的な支援をどうするかということは今後本当に我が国の課題だというふうに思います。
 また、今御指摘の点でございますが、そのように国際的な競技水準の向上に対応していくためには、スポーツ指導者等が高度な専門的能力を習得することが重要であり、スポーツ基本計画においても、スポーツ指導者等のトップスポーツの推進に寄与する人材の養成が政策目標として掲げているところでもあります。
 JOCナショナルコーチアカデミーは、我が国のトップアスリートの指導に携わる者の能力向上に重要な役割を果たしているということから、この計画においても、JOCによる更なる充実等の取組が期待をされるとともに、国は必要な支援を行うということになっておりまして、現在、スポーツ振興くじ助成を通じて支援を行っているところでもございます。
 JOCナショナルコーチアカデミーの修了生に対しては修了証が発行され、対外的に修了したことを証明することができるようになっているというふうに承知しておりますが、更なる指導者の評価の確立や適切な活用といった課題に関しては、スポーツ関係機関がスポーツ指導の課題共有、改善充実に取り組むコンソーシアムの設置等を通じて取組を進めていきたいと考えております。
 今後とも、関係団体とも連携しつつ、我が国の国際競技力の向上に資するよう、スポーツ指導者の資質、能力の向上及び社会的地位の確立に向けて取り組んでまいりたいと思います。
 
 
○橋本聖子君 ありがとうございます。
 アスリートが現役引退後もそのような職業といいますか、そういうものを一つのセカンドキャリアとして身に付けるというものが国家的にあれば、またさらに、そういう指導者が地域に戻って、スポーツということだけではなくて青少年の育成ですとか、あるいは、スポーツというのは完全なる予防医療と予防医学ですから、そういうけがをしない、病気にならない子供たちの体をつくり上げていくということに地域と連携をすれば、より、今大きな問題を抱えている医療費の削減にもつながっていくことになると考えております。このことはスポーツということだけではなくて、もっと裾野の広い分野で活躍ができる人材育成を同時にやっていくことがこれからは必要ではないかと思います。是非その点についても御協力、御支援をお願いしたいと思います。
 今パラリンピックが開催中であります。なかなかパラリンピックが盛り上がらないということで、非常にこれをどのように、多くの皆さんにこのすばらしいパラリンピックというもの、そしてそこで活躍する選手の背景、そういうものが私は逆に言えばこれからの教育にまさにつながっていくすばらしいものだと思います。ある意味では、先ほどのような医療というものの観点からも、新しい分野に健康産業として向かっていくことができるということであり、私はパラリンピックほどすばらしいものはないと思っています。今、世界に比べますと、日本のパラリンピックのナショナルトレーニングセンターは、まだまだといいますか全く遅れているような状況であります。特にスポーツの指導者、障害者スポーツの指導員というのはここ十年間ほぼ変化なしということで、二万二千人にとどまっているという現状であります。
 なかなか同時に同じ場所で利用するということはできないことで、今回も新しくナショナルトレーニングセンター、これをパラリンピックの選手、障害者スポーツのためのナショナルトレーニングセンターというものの調査費が盛り込まれて、非常に私たちにとっては期待をしているところなんですけれども、その状況をどのようにこれから進めていかれようとしているのか、お考えをお聞きしたいと思います。
 
 
○国務大臣(下村博文君) 今のナショナルトレーニングセンターでは、一部、障害者スポーツ対応ができるような、パラリンピアンが活用できるようなものもありますが、これ、JPCの方から是非パラリンピアンのためのナショナルトレーニングセンターを造ってほしいという要望を受け、調査費含め今検討しているところでございます。
 ただ、既存の医療関係とも連携することが必要であるというふうに思いますし、また、なかなか交通移動の部分から、一か所というよりは、できたら全国に何か所か、それほど大規模化ではなくても、できるだけ交通の便の身近なところで、なおかつ医療的なものをカバーしながらそういうナショナルトレーニングセンター的なものをできないかということで、日本障害者スポーツ協会等からも、あるいはパラリンピアンからも要望されているところでありますし、できたら二〇二〇年に間に合うような形で是非進めたいというのが今政府で考えている方針でございます。
 
 
○橋本聖子君 御存じのように、障害者スポーツは大変なカテゴリーがありまして、視覚障害、聴覚障害、髄損傷による腰椎関係とカテゴリーがあります。そういった選手たちは、全く医療が伴わなければいけない選手や、あるいは医療がそれほど伴わなくてもトップレベルでできる選手など、あらゆる分野に分かれているんです。
 是非大臣にお願いをしたいのは、パラリンピアンに直接声を聞いていただきたいと思います。ただ単にパラリンピアンの選手たちというのは競技力向上だけでは決してないんですね。選手たちが何を求めていて、障害者としての全体的な社会に向かって何を発信するべきかというところまで奥深く考えている選手たちが非常に多いということ、それを一つの国の政策の基本といいますか、基本的な考え方や、これから社会と障害者が本当の意味でのバリアフリーの世界を築いていくために大変な大きな考え、ヒントを持っておられる選手たちばかりですから、ナショナルトレーニングセンター・パラリンピック版というのもつくり上げていくときには、是非、事務方ももちろんですけれども、まずは第一にアスリートの声を聞いて施設づくりというものに入っていただければ、私はよりすばらしいものができるんではないかなと思いますので、よろしくお願いいたします。
 二〇一一年に韓国のナショナルトレーニングセンターが集結している鎮川へ、視察をさせていただいたのですけれども、韓国も日本と同様に高齢化に伴う医療費削減、健康増進を進めているということで、非常にすばらしい施設が韓国は整っております。
 そのうち十三競技を重点競技に認定しているんですけれども、国がしっかりと支援をしてあげなければいけない部分のスポーツ、特にライフル射撃ですとか、銃を持つというのは規制が非常に厳しいものですから、そういったことを韓国は非常に緩和をして、小さなジュニアのアスリートのときから特別に銃を持って撃つことができるようなこともしています。そして、人口が少ないレスリングや柔道、バドミントン、そういったものを徹底的に国がサポートして、ジュニアアスリートを育成している。
 そして、トレーニングセンターの周りには十五の体育学校がありまして、午前中は学校に通い勉強をして、午後からはトレーニングをする、そしてスポーツに必要な医科学的な部分や語学などあらゆる面の勉強をして、スポーツということの学校ではあるのんですけれども、次の人生にどういうスポーツが生かされていくかということまで考えているシステムの学校を造ってやっているという国であります。
 そういう点からすると、日本はもう少し踏み込んだ強化も、学校との連携を取りながらやっていきたいということをJOCでは考えているんですけれども、大臣はそのことについてどのような、何か構想がありましたら、是非お考えをいただきたいと思います。
 
 
○国務大臣(下村博文君) まず、パラリンピアンの方々に対しては、是非直接要望を聞くようにしたいと思います。
 先日、ソチのオリンピアンの方々が帰国をされて大臣室に来ていただいて、それぞれ、橋本団長の下に、選手の皆さんが一言ずつ皆さん要望等を言っていただいたのが非常に我々にとっても参考になりました。同じようなことで、是非パラリンピアンからもお話を聞く機会をつくりたいというふうに思います。
 そして、ジュニア競技者の育成の件でありますが、このジュニア期からトップレベルの競技者に至るまでの継続的、計画的な育成は極めて重要であるというふうに思います。ジュニア育成においては、競技力の向上のみならず、人間教育も視野に入れた指導が併せてまた必要でもあるというふうに思います。
 現在、ジュニアの育成については、各競技団体における一貫指導システムによるジュニア期からの競技者育成、そして、JOCにおける味の素ナショナルトレーニングセンターを活用し、長期的、集中的に指導を行うエリートアカデミー事業などが実施されております。
 文科省としても、平成二十六年度から、二〇二〇年東京オリンピック競技大会に活躍が期待されるジュニア競技者を重点的、計画的に発掘、育成、強化するための二〇二〇年ターゲットエイジ育成・強化プロジェクトを実施する予定であります。
 ジュニアの育成については、全国の体育科コースを有する高等学校、体育学部、体育学科を有する大学と連携した方策も考えられるというふうに思います。
 スポーツ学校の創設については、これまでスポーツ基本計画にはない初の御指摘でございます。
 ただ、私は、東京都知事には、前の都知事には、ナショナルトレーニングセンターの隣にまだ都有地空いているところがあるので、そこに元々東京都は中高一貫のスポーツ学校を造るという計画がありましたから、その場所に是非造ったらどうかということを提案をしておりましたが、都知事が今度舛添知事に替わりましたので、これは東京都の計画ですが、二十三区内においても一つ造ったらどうかということを改めて提案したいと思っていますが、それは東京都の話でございますので。
 国としてどうするかということでありますが、国においては、まず一つは現行の学習指導要領での実施の可否、それから国策としてスポーツ学校を創設することの是非という検討をしていかなければならないという、そういうやはり必要性はあるというふうに思います。
 ジュニアの育成が一方で急務であるということ、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックがある、それに対してどう準備できるかということについては同感できる部分もありますので、まずはこのジュニアの育成がより効果的に、体育、スポーツの部分、それから人間教育の部分からどんな形でできるかということについてしっかり取り組むようにしながら、また、私の地元の板橋区の、地元の小中学校がこのジュニアエリートアカデミー事業の受皿の学校になっていますから、そういう学校の話もよく聞きながら、ジュニアのトップアスリートの皆さんがより効果的にメダルに向かっていくような体制を国としてどう取れるかということについてしっかり検討させていただきたいと思います。
 
 
○橋本聖子君 ありがとうございます。
 どうしても育成というのは非常に時間の掛かることですから、リオや東京オリンピックとなりますと、ジュニアの育成と同時にとなりますので、即戦力の育成が必要になってきます。ただ、それ以降を考えると、今まさにジュニア育成一貫指導システムの構築が必要ですので、よろしくお願いをしたいと思います。
 今回の強化のテーマは、人間力なくして競技力の向上なしを掲げさせていただきました。選手たちは、頑張ることができることに感謝をする、多くの人たちの支えがあってこそ自分自身があるんだということで、感謝の気持ちを述べる選手が大変多くあり、有り難いことといいますか、感動しておりました。
 その中で、唯一の金メダリスト羽生結弦選手は被災地の選手であります。自らが被災に遭い、そして家は全壊をして、そして一時的には避難生活を送っていたという選手でありました。被災地の子供たちに、未来の子供たちにメッセージを送りたい、その思いで彼は金メダルを目指して、そして報奨金も全ては被災地の子供たちの競技力の向上のために寄附をするというすばらしい言葉をいただいたと、彼の行動力とその心に感謝をしているわけでありますけれども、そういった羽生選手が頑張ることができたのは、実は被災地の子供たちの熱いメッセージでありました。これから、スポーツというものがすばらしい人間力をつくり上げることができるんだということを彼は体でといいますか示してくれたと思いますけれども、改めて、三年たった被災地の子供たちに夢と希望、感動をお届けできるような大臣からの熱いメッセージをいただければ有り難いと思います。
 
 
○国務大臣(下村博文君) まず、東日本大震災から三周年を迎え、被災により犠牲となられた全ての方々に対して改めて哀悼の意を申し上げたいと思います。
 そして、今、羽生選手の話が出ましたが、大臣室に来られたときも、自分のことではなくて周りに対する感謝、それから被災地の子供たちに対して国がしっかり応援してほしいと、こういうことを羽生選手が要望として出されたということについては、本当にアスリートとしても一流ですけれども、まだ十九歳ですけれども、人間としても一流になっているなということを改めて感じました。
 私は、これまで合計六回被災地を訪問し、子供たちや先生と懇談するなど被災地の教育現場を肌で感じました。被災三周年を迎え、一刻も早い復興に向けて決意を新たにしているところでもございます。被災地においては、仮設校舎や間借り校舎などでの学習を余儀なくされている子供たち、まだ百校近くあります。依然として厳しい学習環境の中で一生懸命学び励んでいるということに対して、国がもっとバックアップをしなければならないというふうに思います。
 子供たちには、現在の苦難を乗り越え、力強く成長してほしいと願っております。困難な状況にある今こそ、互いに助け合い、人と人とのきずなの大切さや仲間とともに郷土を発展させていくすばらしさを知り、未来に向かって大きく羽ばたく礎を是非こういう厳しいときだからこそ築いてほしいというふうに思います。
 私としては、学校施設の復旧、子供たちの心のケアや就学機会の確保のための経済的支援、教職員定数の加配措置などを通じまして、子供たちが以前と同様落ち着いた環境の中で安心して学べるよう、全力で応援をしてまいりたいと思います。
 
 
○橋本聖子君 ありがとうございました。