平成24年07月11日 本会議
○議長(平田健二君) 橋本聖子君。
〔橋本聖子君登壇、拍手〕
○橋本聖子君 自由民主党の橋本聖子でございます。
私は、自由民主党・たちあがれ日本・無所属の会を代表して、子ども・子育て支援法案等について質問をいたします。
今回の法案は、三党合意によって政府案が修正され、基本的に自民党、公明党の案に沿ったものになりました。調整に当たった関係各位の御尽力に敬意を表します。
同時に、これから制度を具体化していくに当たっても、これまで幼児教育・保育の関係者が積み上げてきた成果を大切にし、全ての子供たちが質の高い教育を受けられる制度にしていただくようお願いいたします。
まず、法案の内容について伺います。
三党合意に基づく修正案では、現行の幼稚園、保育所、認定こども園の制度を基本として、幼児教育・保育の充実を図っていくことになりました。同時に、これまでの文部科学省、厚生労働省に加えて、内閣府にも担当大臣や担当部局が設置されることになります。
この体制は、見方によっては、幼児教育・保育制度が一元化ではなく三元化になってしまうという批判もあるかと思います。もちろんそういう趣旨ではないと思いますが、こういった批判に対してどう説明していくのか、我が党の提案者にお伺いをいたします。
今回の修正で、当初の政府案にあった株式会社の参入がなくなったことは高く評価をしたいと思っております。既に特区では株式会社の学校教育への参入が行われておりますが、必ずしも順調にいっていない例も見られます。問題点が多いため、特区の全国展開は見送られることになりましたが、そういう状況にもかかわらず、学校教育の一環である総合こども園に株式会社の参入を認めようとした当初の政府案は、大変乱暴なものだったと言わざるを得ません。
今回は幸いにも政府案は修正されたわけですが、今後とも、学校教育の一環としての幼児教育には株式会社を参入させるべきではないと考えます。今後も株式会社の参入は検討する予定はないと、文部科学大臣から明確におっしゃっていただきたいと思います。
次に、保護者や子供にとっての新制度の意味について伺います。
新制度は、当然、家庭教育を中心としながら、これまでより質の高い幼児教育を提供することを目指してきた制度でなくてはなりません。間違っても、単に子供を預けやすくする、親に楽をさせる、そういう制度であってはならないと考えます。
そこで、我が党の提案者に伺いますが、新制度によって、親や子供の側から見るとどのような点が今よりも良くなるのでしょうか。新制度が教育、保育の質の向上にどのようにつながるのか、お聞かせいただきたいと思います。
次に、新制度の財源について伺います。
新制度に必要な一兆円のうち、七千億円を消費税の増税で賄うとされております。しかし、残りの三千億円の財源については具体的に示されておりません。
総理に伺いますが、この三千億円の財源はどのようにしてつくられるのでしょうか。ほかの教育関係の事業を削ってこれに充てるというようなことでは困りますので、少なくともそうではないことを明言していただき、また、どのように財源をつくるのか、具体的な方策をお聞かせいただきたいと思います。
次に、新制度の周知について伺います。
今回の制度改正によって、子ども・子育て支援の制度がこれまでよりも充実する一方で、これまでよりも複雑な制度になるという面もあります。また、三党合意で案が変わりましたので、更に分かりにくくなったことも否定できません。
幼児教育・保育に携わっている関係者の方々からも難しいという声を聞くことがあるくらいですから、今まさに子育て中の一般の方、また、これから親になるという若い方々にとって非常に難しい制度だと思います。制度を十分に御理解いただくのはこれからの課題になるかと考えます。
そこで、特に子育て中の保護者を中心とする方々に対して、今後、新制度をどのように説明していくのでしょうか。総理に伺いますが、政府の具体策もお聞かせいただきたいと思います。
子供にとって初めての教師は親であると思います。国や社会の役割は、全ての親が初めての教師の役割をしっかり果たせるよう見守り、支えてあげることが必要であると考えます。
これまで、我々自民党は、子供は家庭で育てるということを基本としてまいりました。それは、親を尊敬する心、人を尊敬する心の根幹を育てるのが家庭教育だからです。家庭教育こそが社会や国を支える根幹になると言っても過言ではないと考えます。
民主党は、子供は社会で育てるという方針を掲げていましたが、もしそうなら、家庭教育の役割は何だとお考えでしょうか。子供が親を尊敬する気持ちはどのように育てるのでしょうか。総理と小宮山大臣の御認識をお聞かせいただきたいと思います。
二十七日からロンドンにおきましてオリンピックが開催をされます。私自身、子育てをやりながら感じる点は、子育てとスポーツは共通する部分が多いのではないのかという点です。
オリンピックで活躍するスポーツ選手の姿は、人々に夢や希望、そして感動を与えます。しかし、そうした選手の活躍の裏には、人に見えない苦しい部分、見返りを求めない努力の部分があります。誰にも評価してもらえない、成果が出るか分からない、悩み苦しみながら黙々と練習をする、その長い年月があります。そうしたひたむきな努力の積み重ねがあるからこそ、成果が出たとき、目標を達成したときの喜びも大きくなり、見る人の心も動かすのだと思っております。
その点が子育ても同じで、親がひたすら努力し、献身している時間があるからこそ、子供は親に愛されていることを感じ、人を愛し、そして人から愛されることを学びます。そうした気持ちこそが親に対する尊敬を生むことになるのだと思っております。
努力と献身は、時に苦労のように思えるかもしれませんが、そういう意味では、子育てには苦労があって当然であると考えます。もちろん、過ぎた苦しみは国がしっかりと支えてあげなければなりませんが、子供は社会で育てるなどといって、子育ての苦労をなくし、親を楽にさせてあげるという政策は、親を尊敬しない子供をつくり、国家を衰退させる道にほかなりません。
国家の未来に明るい展望が開けるには、まず、人々が、とりわけ子供たちが夢や希望や感動を持って暮らせることではないでしょうか。総理は、短時間であってもロンドンに赴いてオリンピック外交を展開したいとおっしゃっていただきました。子供たちが夢を持てる国づくりには、今回のロンドン大会のみならず、二〇二〇年の東京オリンピック、パラリンピックの招致も大変重要な国家戦略であると考えております。総理の意気込みをお聞かせいただきたいと思います。
子供たちが夢を持てる国づくり、そして子育てから始まる教育は、国家百年、二百年の計であります。しかしながら、民主党の三年間は、国家百年の計に立った国づくり、教育とは程遠いものであったと思います。子供たちの未来のためにも総理には正しい道に進んでいただくよう強くお願いしますが、未来の展望が開かれないのであれば、解散・総選挙しかありません。総理には間違いないこの国の進むべき道を是非お考えいただき、そのことを強く要望して、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(野田佳彦君) 自由民主党、橋本聖子議員の御質問にお答えをいたします。
まず、子ども・子育て支援法案の財源についてのお尋ねがございました。
三党合意に、幼児教育・保育、子育て支援の質、量の充実を図るため、今回の消費税率の引上げによる財源を含めて一兆円超程度の財源が必要であり、政府はその確保に最大限努力するものとする旨が盛り込まれたことは大きな意義を持ちます。その三党合意を踏まえ、子ども・子育て支援法案の附則に、幼児教育・保育、子育て支援の質、量の充実を図るため、安定財源確保に努めるとの規定が追加をされました。
財源については、今回の三党合意や法案の附則に基づいて、その確保のため最大限努力をしてまいります。
次に、子ども・子育て支援制度の周知についてのお尋ねがございました。
御指摘については、まずは、国会での御審議を通じて、国民の皆様に制度改正の内容についてその意義や仕組みを分かりやすく説明することが重要であると認識をしています。その上で、法案を成立をさせていただければ、制度の利用者や関係自治体など関係者に広く、かつ、できる限りきめ細かくやり方や媒体を工夫して周知するように努めてまいりたいと思います。
続いて、子育て政策の理念についてのお尋ねがございました。
家庭教育は全ての教育の出発点であり、基本的な生活習慣の習得、自立心の育成、心身の調和の取れた発達などに重要な役割を担っているものと考えます。御指摘の子供が親を尊敬する気持ちについても、こうした中で親自身の人生への向き合い方や人間としての生き方を示すことを通じて育まれていくものと考えます。一方で、家庭や地域を取り巻く環境の変化に鑑み、社会全体で子育てを支えていくことも重要となっており、家庭教育の重視と社会全体での子育ての支援とは共に大切な理念であると考えます。
最後に、二〇二〇東京オリンピック・パラリンピックの招致についてのお尋ねがございました。
オリンピック・パラリンピックの開催は、御指摘のように、国民に夢と希望を与えるものとなり、東日本大震災からの復興を示すものともなります。政府としては、昨年制定されたスポーツ基本法や招致に関する国会決議も踏まえ、大会の招致を支援し、我が国での大会開催を是非とも実現させたいと考えております。招致活動に当たっては、東京都だけではなく、スポーツ界、経済界などが一体となって国民的な運動に高めていくことが大切と考えており、そのために政府としてもしっかり取り組んでまいりたいと思います。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣小宮山洋子君登壇、拍手〕
○国務大臣(小宮山洋子君) 家庭教育の役割についてお尋ねいただきましたが、子ども・子育て支援法案では、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本認識に立っていることを明記しています。
子供は親、保護者が育むことが基本で、また、家庭教育は子供が豊かな人間性を育むために重要な役割を果たしていると認識しています。しかし、近年の家族構成の変化、地域のつながりの希薄化などにより家族や地域の子育て力が低下していることを考えれば、社会全体で子育てをしっかりと支えていく新しい支え合いの仕組みを構築することは、時代の要請、社会の役割とも言えます。
子供は家庭で育てるか社会が育てるかという二者択一ではなく、家庭を中心に、子供にとって最善の利益を考え、次の世代を担う子供たちが健やかに成長できるように子育てを社会全体で支援する環境を整える、そのことが重要だと考えています。(拍手)
〔国務大臣平野博文君登壇、拍手〕
○国務大臣(平野博文君) 橋本議員から、幼児教育への株式会社参入についてのお尋ねがございました。
学校教育においては、教育基本法第六条において公の性格を有するとされております。その提供主体は、公共性、持続性、安定性を備えることが要請されておることから、国、地方公共団体、学校法人に限定をされております。
政府提出法案では、学校と児童福祉施設の性格を有する総合こども園について、現行の保育所が原則として全ての総合こども園に移行するという特殊な事情にあることを鑑みて、株式会社の参入を認めることとしておりました。修正案では、これまでの国会審議等で示された懸念も踏まえ、株式会社の参入は認めないこととされております。
文部科学省としては、参議院での御議論を踏まえて対応したいと考えております。
以上でございます。(拍手)